2023.4.19

【クロースアップ】広島F・Doの若き指揮官、加藤亜土監督

2022-2023シーズンから広島F・Do(エフ・ドゥ)の指揮を執っている加藤亜土監督。1995年8月13日生まれの27歳だ。Fリーグ歴代監督の中でも、20代半ばでの就任は異例のこと。昨春、来広した際は、チーム所属選手17名のうち7名が監督(当時26歳)より年上だった。

若き指導者は、いかにして誕生したのか。あゆみを辿ってみよう。

原点は中学時代

長野出身の加藤氏。小学校1年生からサッカーを始め、5年生からは柄沢健氏(F2ボアルース長野前監督、現在はセカンドチームのボアルース長野ヴェルメリオ監督)のもとでフットサルを始めた。

指導者を志したのは、中学生の頃。最初はJリーグの指導者を目指していた。

「指揮している方がカッコいいなと思って。勝敗が自分の責任だし、監督の色がチームの色になるじゃないですか。監督になるのが一番面白いんじゃないかなと」

自ら「サッカーオタクだった」と振り返る。サッカー関連の雑誌や本を読み漁り、試合の映像を見て情報収集するほか、日頃から監督の話すこと、戦術やセットプレー、トレーニングメニューなどをすべてメモして「サッカーノート」を作っていた。情報満載のノートは、今でも手に取ることがあるという貴重なデータブックとなっている。

大学は、指導者になることを視野に入れつつ、プレーヤーとしても競技を続けるため、スポーツ学部とフットサルチームの両方がある立命館大学を選んだ。サッカーではなくフットサルのチームに籍を置いたのは、戦略があってのことだった。

「Jリーグは、若くして指導者になるのは参入障壁が高かったので、フットサルの監督として頂点を極めてからJリーグ監督になれば、特徴を出せるのではないかと考えました。でも、より本格的にフットサルを始めたら沼にハマってしまって、サッカーに戻れなくなりました(笑)」

フットサルは、足でボールを蹴る競技であることはサッカーと共通しているものの、競技性は大きく異なり、むしろバスケットボールやハンドボールに近いという。サッカーオタクだった加藤氏は、ここから大きく舵を切り、加速度的にフットサル指導者への道を進んでいくことになる。

2022-2023シーズン、広島エフ・ドゥで指揮を取る加藤監督

想いを繋げ!

監督として初めてコートサイドに立ったのは、大学4回生のとき。学生監督誕生のきっかけは、B級指導者講習に参加したことだった。当時、21歳。

「元日本代表だとか、そのキャプテンだとか、すごい経歴の人ばっかりで。絶対追いつけないって思ったんですよね。だから、今すぐ選手は辞めようと思いました。その人たちがたとえば選手生活をまっとうして35歳で指導者になるとして、僕が今から始めたら、同じ年齢のときには指導者としてのキャリアを積み重ねられているわけじゃないですか。それでやっと対等になれるんじゃないかと思って。だから、すぐ引退しました」

中学時代から目指してきた「監督」の立場で迎えた初めてのシーズンは、開幕5連敗。「地獄でした」と振り返る黒歴史だが、それさえも糧にしているところが加藤氏の逞しいところだ。

「ウソみたいな負けも経験して、でも最高な勝ち方をできる時もあると知っているので、続けられます。試合に勝てると、また頑張ろうという気持ちになる。選手たちが頑張ってくれたり、楽しそうにやっていたりすることがモチベーションになります」

立命館大学フットサルチームAll.1監督時(後列右端)

卒業後も継続して、大学と立命館宇治高校で指導者としてチームを率いた。高校時代から育ててきた選手が大学生になると、立命館大学フットサルチーム(体育会同好会)All.1は、徐々に結果を出し始めた。2021年7月には、第17回全日本大学フットサル大会関西大会で優勝。全国への切符を手に入れた(全国大会は新型コロナ感染拡大のため中止)。

「もう、自分が辞めても強いままでいられるかなと思いました。辞めどきかなと」

それまでも、他チームからオファーを受けることはあった。チームを途中で投げ出すことはできないと固辞してきたが、十分に力をつけてきた頼もしい選手たちなら、自分がいなくても大丈夫と新天地を目指すことに決めた。

そのときに挙がっていた移籍先候補の一つが、広島エフ・ドゥだった。

「F1のチームからも話はありましたが、まだ身の丈に合わないかなと…。あと、他はコーチとしての要請だったりする中、広島は監督としての話だったので、惹かれました」

2年目のシーズンへ

フットサル界は、監督も選手も、仕事をしながらチーム活動もする「二足のわらじ」が基本。加藤氏は、平日の日中は、広島駅新幹線口にある「エキキタサンフレッチェフットサルコート」で受付を担当している。

チーム練習は、平日夜に3回と、土日。週5回は基本的に全員が集まって汗を流す。

「広島はフットサル場も、フットサルができる体育館も少なくて、継続して使える練習場所の確保が難しいのが現状です」

東京や大阪などと比べると決して恵まれた環境とは言えないが、広島市内や東広島市などでいくつか練習場を見つけ、技術を磨きチーム力強化に努めている。

昨季は、「チャンスを作る展開があってもなかなか勝ちきれない試合が多かった」(加藤氏)ため、現在は、新シーズン開幕に向けて修正を施している最中だ。

「映像を見たりデータを調べたりしながら、どんなシーンでの得点や失点が多いかなどを分析して、どこを変えていくかを考えています。現場での指導や試合中の采配も大事ですけど、(監督業は)パソコンの前にいるのが本職と言う感じです。そこでどんな仕事ができるかが大事かなと。全部1人でやるので大変ですけど、それが楽しみでもあります。人に任せたら責任が分散しちゃうじゃないですか。大変な分、勝ったとき嬉しいので。勝つ喜びを知っちゃうと、戻れないですよね」

4月に入り、いよいよ2023-2024シーズンを共に戦う新体制が固まった。8日のミーティングを経て、9日からは新チームでの練習もスタートした。このあとチームは、5月に行われるFリーグオーシャンカップに出場し、6月開幕のFリーグ・ディビジョン2(F2)に参戦する。

加藤監督体制で迎える2年目のシーズン。どのような展開が予想され、我らが広島エフ・ドゥはどのような戦いを見せてくれるのだろうか。

「昨シーズンは、しながわ(シティフットサルクラブ)が15勝0敗1分で圧勝したんですが、2位争いは最後までほとんどのチームに可能性がある状況でした。でも今年(2023-2024シーズン)は一強がいないので、混戦になるんじゃないかと思います。面白いリーグになるんじゃないでしょうか。広島エフ・ドゥとしては、F1に昇格したいですよね。そのためにまずはF2リーグで1位になって、(F1・F2)入れ替え戦に出られるよう頑張ります」

リーグ戦の日程は、まだ公表されていない。チームHPやSNSでの告知を要チェック。目標に向かって邁進する加藤エフ・ドゥを今季も応援しよう!

▶︎広島F・DOオフィシャルウェブサイト https://www.hiroshima-fdo.net

☆Fリーグオーシャンカップ2023 の日程とトーナメント表が発表されました。広島F・DOは、5月16日15:30からの1回戦でフウガドールすみだと対戦します。詳細はFリーグ公式ウェブサイトで。
▶︎開催概要 https://www.fleague.jp/leaguecup/outline.html

▶︎トーナメント表 https://onl.bz/if9mkGn

取材・執筆:きたのまゆみ
【プロフィール】
ライター、東京都荒川区出身
在京中はスポーツを主なフィールドに、雑誌、新聞やウェブなどで取材・記事執筆。
広島移住後は、約2年間にわたりヴィクトワール広島のチーム運営スタッフとして企画広報を担当。現在は、タウン情報誌やウェブを中心に活動中。

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