2023.5.11

【ヴィクトワール広島】最強戦士列伝④:カーター・ベトルス

今季、ヴィクトワール広島に新加入したオーストラリア出身のカーター・ベトルス選手。

1998年9月2日生まれの24歳で、中山卓士監督の言葉を借りれば「ワン・ダイレクション(ビートルズの再来と言われるイギリスの人気バンド)みたい」ないわゆる“イケメン”アスリートだ。

3月には日本国内のレースで立て続けに優勝し、期待通りの強さも見せつけている。早くもヴィクトワール広島サポーターのハートをガッチリつかみ、ファーストネームの「カーター」で親しまれる若きオージーに話を聞いた。

競技歴5年目の若き実力派

取材に先駆けて中山監督に話を聞くと、まず出てきたのが件の“イケメン”発言で、続いて人柄を褒める言葉だった。

「いつも笑顔で、『ありがとう』の言葉とかも素直に口にできる子なんです。イケメンなうえに性格もすごく良いので、会った人はみんなファンになってしまうはずです」

選手としての実力はもちろんのこと、人間性にもすっかり惚れ込んでいる様子だ。

そんなカーターが自転車に乗り始めたのは、2018年のこと。他競技のトレーニングの一環として始めたが、すぐにその魅力に取りつかれ、友だちと毎朝のようにサイクリングに出かけるようになったという。

「新しい場所を探検したり、スピードを体感したりするのを楽しんでいました。レースに出るようになったのは、それから1年後のことです。レースは大好きです。自分にすごく合っていると思います」

高校時代は陸上競技に打ち込み、最も得意とする1500mではオーストラリア・クイーンズランド州のチームに所属して活躍したが、転向後は自転車競技の才能を一気に開花させた。競技歴はまだ今年で5年目と決して長くはないが、国際舞台でも多くの結果を残している。

本人は「昨年がこれまでのベストイヤーでした」と振り返る。

2022年シーズンは、オーストラリア国内でのレースでも良い成績を収めただけでなく、8日間にわたって総距離約1,200kmを走破するアジア最難関の自転車レース『ツール・ド・ランカウイ』では、第5ステージ〈注1〉 3位で表彰台に上がり、第8ステージではKOM〈注2〉 5位の好成績を収めた。ニュージーランドで行われる大規模レース『ツアー・オブ・サウスランド』ではステージ優勝を飾り、全日程を終えて総合2位に輝いた。

また、日本でのUCI国際レース『おおいたアーバンクラシック』にも出場し、9位でゴール。その大分で、中山監督と会ったという。

〈注1〉…1日で優勝者を決めるレースを「ワンデーレース」と呼ぶのに対し、数日間にわたって実施され、原則1日1ステージを行うレースを「ステージレース」と言い、各ステージの順位と、全ステージのトータルタイムによる総合順位を争う。
〈注2〉…コースに山が含まれているレースでは、山頂を上位で通過した選手に山岳賞(KOM=King Of Mountain)が与えられる。

相思相愛のチーム加入

大分でカーターの走りを見た中山監督は、それまでの経歴も加味して、その場でスカウト。チーム加入を打診した。その申し出は、活躍の場を広げ、さらなるキャリアアップを期するカーターにとっても歓迎すべきものだった。

「海外のチームに加わりたいという思いは、ずっと持っていました。でもコロナ禍で国外へ出ることができなくなってしまって…。ミスター・ナカヤマが私のポテンシャルを見出して、チームに迎えたいと言ってくれたことがとても嬉しかったです」

夢だった、海外チームでの活動。世界中に数多あるサイクリングチームの中でヴィクトワール広島を選んだのは、「ミスター・ナカヤマはとてもいい方」という好印象と、チームが目指すものと自らのキャリアプランが合致すると感じたから。

「世界のいろいろな国でレース出場してきましたが、アジアが一番好きなんです。ヴィクトワール広島は、私が出場したいと思っていたレースに参加しているチームだったので、選びました。それと、日本人強豪選手だけでなく強い外国人選手とも契約していたので、たくさんのレースで勝利を狙えるチームだと感じました」

 3月19日、チーム新体制お披露目会にて(右から5番目)

          

チームは今季、3月19日の西日本チャレンジサイクルロードレースで国内初戦を迎え、翌週・25日には参戦するJCL(ジャパンサイクルリーグ)プロロードレースツアーが開幕した。

広島・中央森林公園で行われた通称「西チャレ」で、オレンジ色のヴィクトワールジャージを身にまとったカーターは、地元ファンの声援を受けて圧勝で来日初V。ツアー開幕戦でも見事優勝を飾り、中山監督やヴィクトワール広島サポーターの期待にさっそく応えて存在感を示した。

「レース会場にはたくさんのヴィクトワール広島ファンがいて、すごかったです。オーストラリアでは自転車競技ファンはとても少ないので、皆さんの声援を聞いてビックリしました。その日の夜はパーティー(お披露目会)でファンやスポンサーの皆さんとお会いしましたが、それも素敵な体験でした。これまでのところ、練習環境もいいし食べ物も美味しいし、広島が大好きです」

▲コース脇を埋め尽くすファンの前で来日初Vを飾り、ガッツポーズを見せるカーター

悪天候の中で行われたJCL開幕戦の真岡芳賀ロードレースでは、序盤から積極的なレース運びで、全身泥だらけになりながらゴールラインをトップで駆け抜けた。

「JCL開幕戦ということで、とても気持ちが昂りました。ただ、レースコンディションは最悪で、雨がひどかったし、とても寒かったです。序盤に、ほかの3人の選手と一緒に逃げることができました。勝負どころだと思ったのは、残り10kmくらいの時です。集団が私たちに追いつきそうになったので、勝つために1人で逃げようと決めました。勝てて、とても嬉しかったです。できれば、今季はもう何戦か勝ちたいです!UCIレースでも勝ちたいです」

最後に、早くもヴィクトワール広島の顔となっているカーターから、チームを支えるファンへのメッセージを預かった。

「応援ありがとうございます!日本語が話せないにも関わらず、受け入れてくれて、親切にしてくれて嬉しいです。私たちがレースに出場できるよう支えてくださっているスポンサーの皆さんにも感謝しています。レースで活躍し続けて、皆さんにヴィクトワール広島のジャージをたくさん見せたいです」

次戦は、5月21日からのUCI国際レース『ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)』。大阪でスタートし、最終日の東京まで8日間にわたり8つの会場でレースが行われるステージレースだ。現地で、またはインターネット配信を通して、ぜひ観戦・応援を。

▶︎TOJ公式ウェブサイト https://www.toj.co.jp

▶︎TOJライブ配信 https://www.youtube.com/@BPAJch

☆ヴィクトワール広島 公式ウェブサイト https://victoirehiroshima.com

取材・執筆:きたのまゆみ
【プロフィール】
ライター、東京都荒川区出身
在京中はスポーツを主なフィールドに、雑誌、新聞やウェブなどで取材・記事執筆。
広島移住後は、約2年間にわたりヴィクトワール広島のチーム運営スタッフとして企画広報を担当。現在は、タウン情報誌やウェブを中心に活動中。

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